イシダライガのねっとり現代文

入試現代文を、ブログだからできる文量でねっとりと解説します。

明治大 2020 国語『中動態の世界』解説・上

 ここでは、入試現代文を日本一じっくり解説していきます。

 塾の講義のように時間の制限や授業料なく、

 解説動画よりも読み返しやすく自分のペースを保ちやすい、

 ブログだからこそできる国語学習を提供します。

 

 赤本や講義で現代文を勉強しても納得できなかった方。

 困惑したまま解答を見ても内容が薄くてガッカリしている方。

 そもそも本文理解できなかったのに概要とかほざいてまとめんじゃねえとブチギレなさっている方。

 いらっしゃいましたらどうぞ続きをお読みください。

 このブログ自体が現代文勉強法です。

 上中下全部読めば、学校の先生よりも深く理解できる……かもよ。

 

 一人につき五百円から千円くらい取りたい内容ですが、無料です。

 読むのにお金取ると著作権とか怖いから……代わりに広告とかあるのは許して

 

 今回は、明治大学経済政治学部 2020年2/11の一般入試で出題された国語の大問一です。

 出典は國分功一郎著『中動態の世界 意志と責任の考古学』になります。

 先日終了した2021年のものではありません。

 

 明治大を志願している方はもちろん、他のMARCHや早慶関関同立クラスを目指している方も挑戦してみましょう。

 奇をてらったところがないので、やりこめば力になる問題だと思います。

 

 

 
 該当箇所をすでに解いている人は、赤字で始まる解説箇所まで読み飛ばしてください↓
 まだの人は、問題を用意しましょう。
 
 問題はパスナビの 該当ページ からダウンロードできますね。
 会員登録していない方はしておきましょう。進学希望であれば何度も使うサイトです。
 最新の赤本が手元にある方はそちらを参照してもOKです。中身は変わりません。
 
 ダウンロードができたら、印刷しておきましょう。ひとつのスマホで問題と当ブログを行き来していると絶対にワケがわからなくなりますよ。
 パソコンとプリンターがあればラクかと思いますが、スマホしかなくてもなんとかなります。
 ここ などを参考にしてコンビニで印刷しましょう。
 
 ……読める状態になったでしょうか?
 では、いきなりですがこの大問一に挑戦してみましょう。
 本番を想定するなら、20分少々で終えたくはあります。
(全部で60分で大問が計三つですからね)
 でも今回は倍以上かかっても構いません。
 難しいようなら途中でギブアップしても大丈夫です!
 
 全文を読んで全問答えきるか、ギブアップしたら、この先を読み進めてください。
 
 ……。
 …………。
 ……………………。
 
 よろしいでしょうか?
 パスナビは本当に便利なもので、解答も閲覧できます。
 

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  タブを切り替えれば見れちゃうんですね。
  読み切ってすべて答えられた人は、ついでに答え合わせもしてみましょう。
 
 ……いかがでしょうか。
 明治大学政治経済学部の一般入試における点数配分は、英語150・国語100・選択科目100です。
 そして合格最低点は350点中250点前後なので、本番で七割以上正解できると合格が見えてきますね。
 
 今回解いてみて、もしあなたが八割以上正解できたのなら、胸を張りましょう。
 あなたの素質は十分にあります。
 同レベルの問題をどんどん解いていけば、模試での点数も安定してくるはずです。
 英語の長文と同じで、経験を重ねれば崩れなくなりますからね。
 
 七割以下だった人。
 大丈夫です。
 ここまで読んでくれている人はだいたいみんなそうですから。
 現代文ニガテな人じゃないと、このブログには来ないと思います。
 だから気に病むことはありません。同じ境遇の人がたくさんいます。
 それでも落ち込むようであれば、このフリー素材の原始人のことでも考えてください。
 
 

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どうやったら旧石器時代にカメラを持ち込めるんですか?


 

 ?
 
 
 ここから長いからいったん休憩挟むといいですよ。
 一息ついてから勉強しましょう。
 
 
 ~解説ここから~
 
  • 主題を見る
 本文の解説に入る前に、まずは出典の名前を確認しましょう。
 書名はその本の顔ですから、論旨がそのまま表れていることも少なくありません。
 これは、自分一人で問題を解くときも同様です。国語の問題を解く際は、早めにタイトルをチェックしておきましょう。
 
 先述したように、本問の出典は『中動態の世界 意志と責任の考古学』ですね。

 哲学系の一般書だったようです。

 もし本問を通して気になったら買ってみてもいいですし、スルーしてもまったく構いません。

 ただし、明治大が第一志望という人は「2020年の試験に2017年の本が使われた(比較的新しいところから出題された)」ということを頭の隅に留めておくといいかもしれませんね。

 

 話を戻します。

 今回のタイトルは長いので、主題と副題に分けて考えてみましょう。
 
 主題『中動態の世界』で気になるのは、やはり中動態という言葉ですね。ほぼすべての人にとって聞きなれない部分でしょう。それもそのはず、国語辞書にも載っていないくらいです。
 辞書にさえないのですから、いわゆる「現代文の重要単語」にももちろん含まれません。解答者全員にとって新しいワードであると言い切っていいでしょう。
 以上のことから、謎の概念の秘密を紹介する、あるいは、中動態というみんなが知らない世界へといざなうことが主題の本なのだろうな、という予想が立ちます。
 
 ……と、この程度の予想できれば十分です。
 が、さらに「似ている言葉を連想する」ということができると、よりスムーズに読み進めることができるようになります。
 
 中動態に似ている言葉とはなんでしょう?
 一つだけご存じのはずです。
 最後の二文字が同じ言葉……「受動態」です。
 
 みなさん、英語の授業で必ず耳にしているかと思います。
 《be + 過去分詞》で表すというアレですね。
 The machine is improved (by a man). で「その機械は(ある男の手で)改善された」とか。
 
 この「された」というのが受動態である証です。
 言い換えれば、「その機械は改善された」という日本語も、受動態で表されています。
 
 余談にはなりますが、古文でも同様のことが言えます。
 ~された、という意味は受身と同じです。
 つまり受身=受動態。(なんで全教科で統一しないんだろうね)
 そして受身は、助動詞る・らるで表すんでした。
 「(安原貞室が)貞徳の門人となつて世に知らる」(安原貞室は松永貞徳の門下に入って世間に知られたとかね。
 
 さらにさらに、「受動」の反対語は「能動」であるというところまで連想が及ぶと、パーフェクトです。
 英語が得意な人は、passiveactive をセットで覚えたかもしれません。
 なんにせよ、「なにかをされる人間がいればする人間もいる」「するされるは対立している」ということは、みなさん納得してもらえると思います。
 
 先述の例文で言えば、機械を改善した側は男。された側は機械。
 知ったのが世間で、知られたのが安原貞室。
 ということになります。  
 
 ここで、「能動態なんて言葉聞いたことないが?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。でも大丈夫。
 ~する、で表す文は本来能動態です。区別する必要がないから能動態と呼ばれないだけですね。
 
 
  • 副題を見る
 副題『意志と責任の考古学』には、目新しい言葉はありません。
 ただ、ふつう考古学というのは先史時代の文化・文明に関わる学問に対して使う言葉です。*1
 一方で意思と責任というのは、現代でも毎日のように使われていますよね。そこがやや怪しいポイントです。こちらにも連想の余地はあります。ただこちらも今回の問題には関係ないので、脚注にぶっこんどきます。*2
 
 ではいよいよ、本文に移ります。
 
 
  • 第一段落
 最初から何言ってるかわかんなくてヤバいって人もいるかもしれません。
 いいんです、それで。
 一緒に読み解きましょう。
 
 結論から言うと、この段落では「キーワードの定義」を行っています。
 第二段落で「定義」という言葉が使われているところから判断したいですね。
 
 すると今度は、こんな疑問を持つ方が出てくるかもしれません。
 
 「なんで一般的な言葉をわざわざ定義するの? 中動態みたいな完全に謎のワードならともかく」と。権力も暴力も、わりと耳にする単語ですからね。 
 
 答えは「本問中では、一般的な理解とは異なる単語の解釈を用いるから」です。
  
 本問がうまく理解できなかった人のうち、この解釈が切り替えられなかった人は多いはずです。耳にしたことがある言葉であるだからといって、元からあった解釈を脇に置かずにいると、文意が掴めなくなってしまいます。
 
 そもそも、「権力」「暴力」ってどういう意味なんでしょう?

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 イメージ的にはこんな感じ……だったりしませんか?

 「権力」はなんか偉そうで、なんか得してそう。

 「暴力」は雑に人を傷つけてそう。
 みたいな。
 
 そういったあいまいな認識を持つのも仕方ないことだと思います。
 日常会話ではそれでも問題ないでしょう。
 文系難関大の個別・二次で現代文を使う人でなければ、こんなこと気にせずに一生を終えるのではないでしょうか(過激な発想)。
 
 しかしこれは文系難関大の入試評論です。
 気にしなければなりません。
 
 論理を組む上で、キーワードがしっかりしているかどうかはとても重要です。
 用いる材料である言葉があいまいであればあるほど、積みあがった論がどんどんブレてしまうからです。
  まして本書は哲学分野の書なので、ことさらにしっりした解釈が必要となります。
 
 おわかりいただけたでしょうか。
 筆者の論を理解するためには、一般的な言葉の解釈を脇に置いて、筆者の解釈と交換しなけらばならないのです。
 
 つまり、暴力は「相手の身体に~作用する」「行為する力そのものを抑え込む」
 権力は「相手の行為に働きかけて相手に行為させる」「相手の行為する力を利用する」
 暴力と権力の理解を、解答中はこれらに交換する必要があります。
 
 
 ……。
 交換するのはいいけど、そんでどゆこつ?
 って、なるよね。
 読み進めるとヒントがあります。
 
 
  • 第二~第三段落(フーコ~にある。)
 二段落は、「暴力」の解説の元になったフーコーを褒めてるだけですね。スルーで。
 
 三段落では「能動的」「受動的」の両方が用いられていますね。
 
 暴力を振るう側=する側=能動的(な立場)
 暴力を振るわれる側=される側=受動的(な立場)
 
 主題の部分で出した挙げた対立関係が、早くも表れていますね。
 そして、暴力における関係は能動受動の関係がハッキリ出ています
 
 
  • 第四~第五段落(では~いる」。)
 四段落。一方で権力はどうか? と疑問を投げていますね。
 
 五段落目から流れが変わってきます。そりゃそうですよ。第一段落からイキナリ難しい話をしている筆者が注意を促しているんですから、本気で注意する必要があります。覚悟の準備をしておいて下さいというヤツです。
 で、なになに?
 「権力関係で権力を行使される側にいる者は、ある意味で能動的だということである。権力を行使される側は、行為するのであるから。

  どういうWhat?

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 おかしなことになってきましたね。
 activepassiveする側される側は、暴力関係のように対立するものだと一般的には考えられていますが、著者の意見は違うのでしょうか?
 
 読み進めると、違うということが判ってきます。
 続きは中編にしましょう。
 高校生の皆さんは、焦らず一息入れてくださいね。
 人間の集中力には限界があります。一気にやろうとせず、こまめに頭を休めてください。
 準備ができたら、次の記事で待っています。
 

 気になることがあればどんどんコメントしてください。

 ただし、解説のリクエストは、リクエスト受付へお願いします。

 
 まだ解説の途中ではありますが、欲しいものリストだけ貼っておきます。
 応援いただけるととても喜びます。 

 

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 当ブログは、読者から授業料・購読料等を徴収することを目的としておりません。

 当記事は、明治大学および『中動態の世界 意志と責任の考古学』からの引用が含まれます。該当箇所の著作権は大学ないし著者に帰属します。明治大学または著者からの要求があった場合、すみやかに当記事を修正・公開停止いたします。

 また、図説のためにいらすとやの素材を利用しています。
 私塾等が営利のためにこのブログを利用することは固くお断りします。利用が判明した場合、こちらが提示する利用料をいただきます。

*1:メチャクチャ倫理が得意な方は、フーコーが「知の考古学」を唱えたことを連想できるかもしれませんが、残念ながら今回はあまり関係してきませんね……

*2:わかりやすいのは殺人事件でしょうか。うっかりミスで他人の命を奪ってしまった事件(過失致死)よりも、明らかに殺害意思を持って起こされた事件(殺人)の方が、罪は重くなりますよね。長期間にわたって練られた計画的な犯罪だと、さらに重くなります。意思が強ければ強いほど、とらされる責任も大きくなると言えますね。